弁護士/司法書士/社会保険労務士BLOG

2018年10月

助成金と解雇

雇用の安定、職場環境の改善、仕事と家庭の両立支援、従業員の能力向上、生産性向上に向けた取組について、雇用・労働分野の助成金が支給されることがあります。助成金は、対象となる受給要件に該当するだけでは支給されず、申請することが必要です。
今日は、弁護士法人愛知総合法律事務所の社会保険労務士の原田聡です。今回は、「助成金と解雇」について。
助成金申請にあたっては、事業主は、助成金の対象となるのかどうかの確認がまず必要ですが、助成金の中には、事業主による解雇(勧奨退職等を含む。)がないことを条件としているものがあります。事業主による解雇があると、助成金の申請をしても、支給されないわけです。
事業主による解雇とは、具体的には、法的倒産手続や事業再開見込みなしによる離職、解雇(重責解雇以外)や希望退職の募集、退職勧奨による離職があります。
退職をめぐる従業員とのトラブルで、「解雇」にしてしまうと、それにより助成金の申請のときに影響が出てくるわけです。影響があるといっても、助成金申請がずっとできないというわけでなく、一定の期間での支給ができないということなので、助成金申請の場合、解雇をしたタイミングが重要になります。
助成金の申請を念頭において、従業員の退職をめぐる問題を考えるとき、どのような対処が適切かを判断しますが、従業員に解雇や退職勧奨をすると助成金によっては、受給できなくなる恐れがありますので、そのような場合は、解雇等によらない解決ができるかどうかの検討が必要かもしれません。
また、解雇であっても、普通解雇ではなく、懲戒解雇であれば、助成金の対象となると思われますので、従業員を解雇する場合、普通解雇なのか懲戒解雇なのかを区分しておくことも必要です。
助成金の申請を始め、労働問題等でお悩みのある方、弁護士法人愛知総合法律事務所までご相談ください。

ブログ執筆者:社会保険労務士 原田聡
2018年10月29日

障害補償給付と障害年金

仕事中や通勤途中、もしくは業務外の事由でのケガ等、治療はしたものの体に障害が残ってしまい、今後の労働に制限されてしまったら・・・・今日は、弁護士法人愛知総合法律事務所の社会保険労務士の原田聡です。
さて、今回は「障害補償年金と障害年金」について。
障害を支給事由として受給できる制度の一つとして、労災保険の「障害補償給付」と国民年金・厚生年金の「障害年金」があります。この障害補償給付と障害年金は、どちらも体に後遺症(または一定の障害の状態)が残った場合にその程度に応じて支給されるものですが、それそれ別個の制度であるために、受給されるための条件が違います。
また労災の障害補償給付は1級から14級まで、障害厚生年金だと1級から3級までの等級がありますが、当然制度が違いますので労災保険の障害に該当したとしても、年金の障害年金に該当するわけではありません。
もちろん、後遺症によっては、労災保険の障害補償給付と年金の障害年金のどちらの条件を満たすこともありますが、満たしたとしても、労災保険と国民・厚生年金どちらも満額をもらえるわけではなく、併給調整されます。
具体的にいうと、障害年金のほうをもらって、労災保険の障害補償給付は減額して支給されることになります。
この併給調整で障害年金と調整されるのは、労災保険の障害補償給付で障害等級が1級から7級までです。併給調整で労災保険が減額されても、調整前の労災保険障害補償給付の額よりは大きくなるように調整されますので、併給により受給できる総額が減るのではとの心配はありません。
このように労災側の減額によって調整されるのですが、障害年金が、20歳前障害による障害基礎年金の場合だと、逆に20歳前障害基礎年金のほうが全額支給停止されます。
また、障害厚生年金で、障害等級が3級よりやや軽い障害が残った時に一時金として支給される「障害手当金」については、労災からの支給があると障害手当金は支給されないことにも注意が必要です。
なお、併給調整は支給事由が同一の場合の「障害補償給付」と「障害年金」で、障害の原因となったケガ等が別個の場合であれば、併給調整されず、労災保険の減額はありません。
労災保険で年金受給者は、年に1回、労災年金の受給要件に該当しているかどうかの確認のため定期報告書を提出します。また障害年金についても同様に、「障害状態確認届」の提出がありますので、提出忘れにご注意ください。
労働問題等何かお悩みがありましたら、お気軽に弁護士法人愛知総合法律事務所までご相談ください。

ブログ執筆者:社会保険労務士 原田聡

2018年10月25日

解雇予告手当の請求手段

未払賃金・未払残業代請求にセクハラ・パワハラ、解雇・退職問題等、労使トラブルはいろいろあります。今日は、弁護士法人愛知総合法律事務所の社会保険労務士の原田聡です。
会社側から労働者側に労働契約の解除をすることを解雇といいますが、解雇は大きく、普通解雇と懲戒解雇に分類することができます。
解雇は会社が一方的に行うものですが、解雇するにもルールがあります。その中の一つに「解雇予告手当」があります。これは、会社が労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、解雇の予告をしない場合には、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければならないというものです。予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分につき平均賃金の支払いが必要とされています。
ということは、即日解雇をする場合には、平均賃金の30日以上の解雇予告手当が必要とういうことになります。解雇のルールといっても、懲戒解雇に該当するような労働者側に責任がある場合には、労働基準監督署の認定を受けることで解雇予告手当の支払いが不要な場合もありますから注意が必要です。
さて、今回は「解雇予告手当の請求手段」について。
労働者が会社から解雇予告手当の支給もないまま即日解雇、労働者としては解雇予告手当を支払ってもらいたいものです。会社に対して、解雇予告手当を請求するものの全く支払われそうにもない。そんな場合に労働者側でやれそうな手段が「少額訴訟」と「支払督促」。
「少額訴訟」とは、60万円以下の金銭の支払いを求める簡易裁判所での訴訟で、原則1回の審理で、即日判決されます。「支払督促」とは、申立人側の申立てのみによって、簡易裁判所書記官が相手方に対して支払いを命じる制度で、少額訴訟と違って、審理がなく、また請求額にも上限がありません。
解雇予告手当の請求の方法のひとつとして、「少額訴訟」と「支払督促」はいかがでしょうか。
但し、次のことに注意も必要です。個人で少額訴訟をしてみたものの、相手方から通常訴訟移行の申出があると、通常の裁判になってしまいます。また、支払督促をしてみたものの、相手方から異議が出ると、これまた通常の裁判になってしまいます。通常の裁判になってしまうと個人での対応が難しいと思います。また、判決で解雇予告手当が認められたとしても、実際に払われるとも限りません。そうなると、判決に基づいて、今度は、「強制執行」の手続きを検討しなくてもいけません。
労働問題等でご悩みのある方、弁護士法人愛知総合法律事務所までご相談ください。

ブログ執筆者:社会保険労務士 原田聡
2018年10月23日

歩合給と支給日在籍要件

労働者が労働の対価として毎月支給される給料。
今日は、弁護士法人愛知総合法律事務所の社会保険労務士の原田聡です。
給料明細書を見てみると、給料の基本となる基本給だけでなく、通勤費としての「通勤手当」であったり、役職に応じて支給される「役職手当」、所定労働時間を超えて働いた場合に支給される「残業手当」など、いろいろな支給項目がありますが、今回は「歩合給」について。
会社によっては、「出来高払い」とか「インセンティブ」とか言ったりしますが、営業成績など売上額等によって支給される賃金のことを歩合給と言います。
歩合給が支給される条件に給料日に在籍していることとされている場合において、既に退職をしてしまった人に歩合給は支給されるのかどうかが問題となることがあります。歩合給も労働の対価として支払われる以上は賃金といえるので、退職してしまっているのだから歩合給を支給しないというのは、賃金の全額払いの原則からも問題がありそうですね。
似たように、ボーナスの支給について、その支給日に在籍していることを条件とすることもあります。問題となるのが、ボーナスの算定の対象となる期間の途中で退職をした労働者に対して、ボーナスの支給日に在籍をしていないことを理由にボーナスを支給しなくてもいいかということです。支給日に在籍していることを条件のことを支給日在籍要件といいますが、ボーナス(賞与)については、裁判例では、支給日在籍要件を認めていることが多いようです。自分の会社の賞与の支払いの条件がどうなっているのか、就業規則等で確認してもいいかもしれませんね。
労働問題等で困りごとがございましたら、お気軽に弁護士法人愛知総合法律事務所の電話無料相談をご利用ください。
2018年10月18日

未払賃金の請求

労働の対価として賃金をもらい、その賃金でもって、日々の生活を営んでいる多い労働者ですが、使用者から労働者に支払われる賃金には、労働基準法ではルールが規定されています。今日は、弁護士法人愛知総合法律事務所の社会保険労務士の原田聡です。
さて、今回は「賃金」について。賃金とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」と労働基準法で規定されていますが、賃金の支払いについては労働基準法第24条で、「①通貨払い②全額払い③直接払い④毎月1回以上の払い⑤一定期日払い」の5つのルールがあります。賃金支払いの5原則と言われているものです。
例えば、残業代であったり、手当の一部しか支払わない場合は、賃金の一部しか支払っていないということで、未払賃金が発生することになります。労働者は、使用者に対して、この未払賃金(未払給料)を請求することができるわけですが、賃金の請求権の時効は2年です。給料の支払日の翌日からみて、2年が経過するごとに時効にかかってしまいますので注意が必要です。なお、退職金に時効は5年となっています。
賃金請求権が時効になるということは、賃金の請求ができなくなるということですが、この時効を止める方法があります。時効の中断といいますが、時効の中断がされると、これまでに進んでいた時効までの期間がなくなります。
具体的には、「裁判や労働審判の申立」であったり、使用者が未払賃金があることの「承認」等によって、時効が中断されることになります。訴訟をするにはその準備にある程度の期間が必要ですが、その間に時効になってしまうことも考えれます。その場合には、「催告」することで一時的に時効の期間を延ばすことができます。催告は、使用者に配達証明付きの内容証明郵便によって請求書を送付することが多いです。
注意としては、催告で完全に時効が中断されるわけではないということです。催告で時効の期間が延長されたに過ぎませんので、完全に時効を中断させるには、催告後6ヶ月以内に裁判等の時効中断の手続をとる必要があります。
労働問題でお悩みのかた、どうぞ愛知総合法律事務所の無料電話相談をご利用ください。

ブログ執筆者:社会保険労務士 原田聡

2018年10月18日
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