労働問題Q&A

賃金

Question

会社が残業代を払ってくれません。残業代の未払いをどのように対応すればいいですか。

Answer

残業代の未払いは、労働基準法違反であるので、労働基準監督署に申告して対応をしてもらうことで残業代が支払われることもありますが、それで解決しない場合は、請求金額にもよりますが、裁判所を使って少額訴訟をすることも検討できます。労働基準監督署を利用するにせよ、裁判所を利用するにせよ、請求する残業代のもととなる証拠は確保はしておいたほうがいいでしょう。具体的には、給料の明細書、タイムカード、賃金規程等です。もしもタイムカード等労働時間を証明するための資料がない場合は、業務日誌や手帳等で労働していたことがわかるもので対応していくことになるでしょう。

Question

持病が悪化し、会社を休職して持病を治したいのですが、休職した場合、休職中の賃金どうなるのでしょうか。

Answer

私傷病による休職は、労働者側に責任のある休職なので、その休職中の賃金は、「ノーワーク・ノーペイの原則」により賃金の支払がないのが通常ですが、会社によっては就業規則で私傷病による休職であっても一定の賃金を支払う等の規定があれば、それに従うことになります。この「ノーワーク・ノーペイの原則」とは簡単に言えば、働かないと給料はないということになります。私傷病による休職期間中の収入確保の一つに健康保険からの「傷病手当金」があります。傷病手当金は、私傷病による病気で休業している期間、健康保険の被保険者やその家族の生活を守るために設けられた制度で、一定の条件を満たしていれば、傷病手当金として、1日につき、標準報酬日額の3分の2相当額が支給されます。支給可能な期間は暦で1年6ヶ月です。1年6ヶ月分の傷病手当金が支給されるわけではありませんのでご注意ください。また業務災害による休業であれば、健康保険ではなく労災保険から休業補償給付等が考えられます。その他にも、有給休暇を取得すれば、賃金は補償されたまま労働義務は免除されることになるので、有給休暇の取得を検討することもできます。

Question

給料には最低の基準があると聞きましたが本当でしょうか。自分の給料が最低賃金を上回っているかどうか調べることができますでしょうか。

Answer

賃金に関する法律に最低賃金法があり、会社は、国が最低賃金法に基づき定めた賃金の最低額以上の賃金を支払わないと最低賃金法違反となります。この最低賃金法は、正社員だけでなくアルバイトやパートであっても適用されます。最低賃金には、都道府県別最低賃金と産業別最低賃金の2つがありますが、どちらも適用される場合は高い額のほうが最低賃金となります。最低賃金額以上かどうかは、月給制の場合であれば、月給のうち最低賃金の対象となる賃金額を1ヶ月平均の所定労働時間で割った金額が最低賃金額(時間額)を超えているかどうかで判断します。なお最低賃金の対象となる賃金に時間外手当や通勤手当、賞与など1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金は含まれません。もしも最低賃金に満たない賃金のまま給料を支給されていた場合、会社に不足分を請求することになりますが、賃金債権は2年で時効ですので、ご注意ください。

Question

裁判で勝訴したにもかかわらず相手はお金を支払ってくれません。給料の差押えができればいいのですが。

Answer

損害賠償請求等裁判で勝訴し、相手方が判決等での金銭を実際に支払ってくれれば問題ないけど、もし支払ってくれない場合、次の手段として「強制執行」の申立等が考えられます。強制執行による差押え一つが給料の差押えで、債務者がサラリーマンであれば、その人は会社に対して給料をもらう権利(債権)があるわけですから、この給料債権を差し押さえてしまうわけです。ただ毎月の給料の全額を差し押さえることはできません。差押えができるのは、給料から社会保険料や税金等を控除した金額の4分の1まで。(控除後の金額が28万以上だと21万円を引いた全額が差押えの対象)給料の差押えの場合は、自分の認められた金額になるまで、毎月の給料ごと差押えをしていくことになります。

Question

看護学生として働きながら看護師の資格を取得することができたのですが、その間、病院から奨学金として150万円借りました。3年間看護師として勤務すれば奨学金の返済は免除されるのですが、実は他の病院で働きたいと思っています。他の病院で勤務するなら150万円一括で支払えと言われてしまいましたが、支払わないといけないのでしょうか。

Answer

看護学生のこのような制度を「お礼奉公」といいますが、いくつかの法的な問題点がありますのでいくつか取り上げてみます。
①労働契約期間の問題
現在、有期労働契約期間の上限は3年です。仮に資格取得後、3年を超える期間働くことを条件にしていれば問題です。
②賠償予定の禁止の問題
労働基準法16条では、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならないと規定されていますので、お礼奉公をしないときには会社が支給した奨学金を返還する義務があるとするのは問題となる場合もあります。奨学金が労働契約とは無関係な金銭の貸与金契約であるのかどうか等検討が必要です。
150万円の返還ですが、会社があなたとお金の貸し借りについての約束をして、本来ならば借りたお金は返さなくてはならないのですが、一定の場合(例えば3年勤務等)には返さなくてもいいですよといった契約自体は有効になります。

Question

未払い残業代の請求は、毎月の給料支払日から2年で時効により消滅してしまうそうですが、時効の進行を止めることはできないのでしょうか。時効の中断はできないのでしょうか。

Answer

時効の進行を止めることを「時効の中断」といいますが、その方法には①請求②差押え、仮差押え、仮処分③承認 の3つの法的措置があります。会社が「承認」をしていない場合は、会社等に「請求」することになります。ただここでいう「請求」とは労働審判の申立等裁判上での請求のことです。とはいえ裁判するには証拠集め等準備が必要で時間がかかります。時間に猶予がない場合は「催告」といって、会社に未払い残業代の請求書を送るなどで仮の時効中断をとることができます。あくまでも仮の時効中断で効力は6ヶ月なので、この期間のうちに裁判をするなど時効の中断の措置をとる必要があります。いつまでも権利があると思ってのんびりしていて、気がついたときには「時効」ということもありますので注意が必要です。

Question

既に退職をしている会社に対してこれまでの未払い残業代を請求することはできますでしょうか。

Answer

既に退職していてもまだ受け取っていない残業代分(未払い残業代)を請求することができますが、いつでも請求できるわけではありません。未払い残業代を請求する権利等金銭債権は、消滅時効の対象となり、未払い残業代の場合は、給料の支払日から起算して「2年」で時効により消滅してしまいます。未払い残業代等請求する場合は、この消滅時効の期間を注意する必要があります。
なお、退職手当の消滅時効は5年になります。

Question

日々残業をしていますが、残業代を支払ってもらっていません。会社がいうには毎月2万円の業務手当が残業代の代わりだといっています。残業代を請求するにはどうすればいいでしょうか。

Answer

残業をしたのであれば残業代を支払ってもらうのは当然です。今回の場合は、まず業務手当がどんな手当であるのか、残業代の意味合いであるのかを就業規則等で確認をしましょう。その上で、実際に残業代がどの程度なのかを計算します。賃金計算の裏付けとなる給料の明細緒やタイムカード、賃金規定等があれば入手しておくと、後日労働審判等で争いになったときに証拠になります。業務手当が残業代としての手当であった場合、業務手当以上労働しているのであれば、残業代の一部未払が発生していることになりますので会社に対して請求することもできます。さて会社に請求をしても支払ってくれない場合はどうするか。解決方法の一つに労働審判制度があります。詳しくは労働審判をご覧ください。

Question

5月末に退職をしたのですが、7月支給の夏のボーナスを請求することは可能でしょうか。
7月の賞与は1月から6月末までの成績で査定されるので、1月から5月末までのボーナスをもらいたいのですが。

Answer

賞与は、雇用契約書・就業規則等で規定があってはじめて会社の支払義務が発生するものなので、まずは就業規則等で賞与の規定内容を確認しましょう。さて今回の場合、賞与の査定対象期間の一部勤務のみで賞与の支給日にはすでに退職されています。会社が賞与を支払う条件として、賞与支給日に在籍していることを求めることがあり、その合理性については議論があります。判例では、賞与の支給日在籍要件の効力を肯定する傾向がありますが、(大和銀行事件)定年退職者等支給日在籍要件によって賞与を支給しないのはどうか、会社の都合で賞与の支払いが遅れて実際の賞与支給日には退職をされてしまった場合はどうかなど問題となることもあります。

Question

賃金とは何ですか。

Answer

賃金,給料,手当,賞与その他の名称のいかんを問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。退職金や賞与はそれを支給するか否かが使用者の裁量に委ねられているかぎりは,恩恵的な給付にすぎず,賃金ではありませんが,労働協約,就業規則,労働契約などでそれを支給することやその基準が定められているものは,賃金といえます。

Question

不況の影響で一時帰休扱いとなっています。この場合,給料はもらえないのですか。

Answer

労務を提供できない場合に労働者が使用者に対して賃金を請求できるか否かは,労務を提供できない理由が使用者の責任にあるかどうかによって決まります。また労働者としても労務を提供していることが必要です(ただし使用者が労務を受け入れる余地がないとして拒絶の意思を明確にしている場合,労務を提供しなければならないという程度は軽減されます。解雇の場合が典型的です。)。
  一時帰休の場合,労働者が賃金を全額請求できるかは,一時帰休の必要性があったか,労使交渉がきちんと行われていたかなどといった事情を総合的に考慮して判断されます。
  仮に全額請求できない場合であっても,休業手当がもらえる可能性もあります。

Question

会社が一方的に賃金を引き下げると言っています。従業員の同意も得ないで賃金を引き下げることは許されるのでしょうか。

Answer

賃金の引下げは,契約内容の変更になるため,原則として,労働者の同意なくして行うことはできません。注意すべき点は,仮に労働者の同意があったとしても,引下げ後の賃金が就業規則の水準を下回るものであれば無効となるということです。
経営上の必要性から労働者の同意なしに賃金を引き下げる必要がある場合,就業規則の賃金に関する規定を変更する必要があります。もっとも,賃金は労働契約のなかでも重要な地位を占めるものですから,賃金引下げの必要性が要求されるほか,労使間での話し合いをきちんと持ったかどうか,賃金引下げの不利益を緩和する措置を取ったかどうかでその可否を判断することになります。また変更した場合,使用者は,就業規則の変更内容を従業員に周知徹底する必要があります。

Question

会社の車で交通事故を起こしてしまいました。会社は,修理費を私の給料と相殺すると言っています。問題はないのでしょうか。

Answer

賃金は,その全額を支払わなければなりません。その趣旨は,生活の基盤たる賃金を労働者に確実に受領させることにあります。使用者は,労働者に賃金を全額支払ったうえで,改めて労働者に損害賠償請求をすることになります。なお,労働者が修理費を給料から差し引くことに同意していても,自由な意思に基づいてなされたものであると認めるに足りる合理的な理由がない場合,相殺は無効となります。

Question

休業手当とは何ですか。

Answer

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合,使用者は,休業期間中その労働者に,平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければなりません。この手当のことを休業手当といいます。ここでいう「責に帰すべき事由」とは,非常に広く,天災などの不可抗力に該当しないものであれば含まれると考えられています。具体的には,機械の検査や原料の不足などによる操業停止,監督官庁の勧告による操業停止なども含まれます。

Question

私はプログラマーで,出来高制で仕事をしています。先月は不況の影響で収入が大きく低下してしまいました。このような給与体系に問題はないでしょうか。

Answer

出来高制とは,労働者の製造した物の量・価格や売上げの額に応じた一定比率で額が定まる賃金制度をいいます。出来高制を取る場合,使用者は通常の実収賃金とあまりへだたらない程度(目安として,平均賃金の100分の60程度)の収入を保障するようにその額を定めなければなりません。保障給が支払われない場合,使用者は,労基法120条で30万円の罰金に処せられますし,支払われていたとしても,基本給が最低賃金を下回る場合は,最低賃金法40条で50万円以下の罰金に処せられます。

Question

賃金の請求権の時効は何年ですか。

Answer

労基法上,賃金は起算点から2年間請求しないときは,時効によって消滅するとされています。退職手当については,5年となっています。

Question

会社が倒産しましたが,4か月分の賃金が支払われていません。泣き寝入りしかないのでしょうか。

Answer

会社が倒産した場合,賃金がどうなるかは労働者にとっては重要な問題です。
倒産手続にもさまざまなものがありますが,企業を清算して残った財産を分配する清算手続型の代表としては破産法があります。破産法では,破産手続開始前3ヶ月間の給料の請求権は財団債権とされ,配当手続を経るまでもなく,管財人によってそのつど弁済されます。それ以外の賃金債権も,民法上優先権が与えられていますので,配当手続では優先的な扱いを受けます。
また企業の再生を図る再生型の倒産手続の基本法としては民事再生法があります。賃金債権は,民法上優先権を与えられているため,手続開始決定後でも,それ以前と同様に随時支払いを受けることができます。
他方大企業などに適用される会社更生法のもとでは,手続開始前6ヶ月の賃金債権は共益債権として,更生管財人によってそのつど弁済され,それ以外は優先更生債権となります。
また,事業主が破産の宣告を受けた場合等には,国が事業主に代わって一定の範囲の賃金について立て替え払いをする制度もあります。詳しくは事業所を所轄する労働基準監督署にご相談ください。

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